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最近のグローバルなエクイティ・マーケットの下落で、「100年に1度の異常事態だ!」という騒ぎになっているらしい(^^;)。 たしかに株式の投資家にとってはそれが真実に近いのであろう。 結果として、少なからぬ数のカリスマトレーダーが退場を余儀なくされたようで、ここにも適者生存の原則がきちんと働いている様子が見てとれる。
これは決して彼らを揶揄して言っているのではなくて、そういった積極的というか常にレバレッジを掛けたスタイルのトレードをするのであれば、アゲインストのときはあっという間に破綻するかわりに、フォローの風が吹いているときには一気に資産を増やせるのだから、単にそれはあくまで自分が選択するスタイルの問題なのである。 だからこそ、彼らは2003年~2005年に掛けての上昇相場を利用してカリスマトレーダーになったのだ。 今回の下落で退場を余儀なくされたとしても、それはハイローラーの本懐というべきだろう。
一方で、私の周囲で商品先物をトレードしている人たち、あるいは株式を売買していても商品先物で相場を覚えた人たちは、昨今の値動きなど意に介さず淡々といつもどおりのトレードを行なって平常どおりのPLをはじき出している。 この点、株式やFXではじめて相場を覚えた人たちと明らかにスタイルが異なるように私には思える。 (繰り返すが、スタイルの違いは個人の好き好きなので、良い悪いの問題ではない。 好みに応じて選べばよいだけだ。)
私の周囲には仕事でトレードをしている人ももちろん少なくないが、個人投資家も多い。 そして、個人投資家の場合、成功している人は例外なく、初心者の頃に商品先物で相場を覚えた人たちだ。 そして、同じ経験年数なら株式トレーダーよりも商品先物トレーダーのほうが学習速度が速いように思う。(この部分は私の感覚的なものなので明確な証左はない。 おそらく商品のほうが相場の春夏秋冬のサイクルを速く体験できるからだろう。) また、彼らは一様に保守的なマネーマネージメントを行い、かつ研究熱心なのも共通している。
後者に関しては、林先生の著書「商品相場必勝ノート」によれば商品先物は株式と違って“理詰め”で売買できる比率が高いせいだというが、前者に関して言えば、それは商品の値動きのテイルが大きいせいであろう。 平たく言えば、株式であれば「100年に1度の非常事態」が、商品先物の場合だと毎年起こっているくらいの感じなのである(>_<)。 従って、商品のトレーダーはどうしても保守的なトレードを心がけるように学習が働いているのである。
黒のチャートを見ていただきたい。 2001年の9月10日~2008年10月8日のデータで作成した日経平均先物の1週間(5日間)のリターンの分布をヒストグラムで示してある。(標準偏差:3.08%、尖度:1.36、歪度:-0.35) 多少ティルトしているもののテイルはあまり大きくないのがわかるだろう。
では次に、青のチャートを見ていただきたい。 同じく2001年の9月10日~2008年10月8日のデータで作成したTOCOMの銀先物の1週間(5日間)のリターンの分布をヒストグラムで示してある。(標準偏差:4.25%、尖度:3.22、歪度:-0.46) 日経平均先物と比べるとテイルが明らかに大きいのがわかるだろう。
そして、緑のチャートは同じく2001年の9月10日~2008年10月8日のデータで作成したTOCOMの原油先物の1週間(5日間)のリターンの分布をヒストグラムで示してある。(標準偏差:4.19%、尖度:1.37、歪度:-0.44) これも日経平均先物と比べるとテイルが明らかに大きいのがわかるだろう。
最後の赤のチャートは同じく2001年の9月10日~2008年10月8日のデータで作成した東穀取のNonG大豆先物の1週間(5日間)のリターンの分布をヒストグラムで示してある。(標準偏差:4.10%、尖度:3.43、歪度:-0.67) これも日経平均先物と比べるとテイルが明らかに大きいのがわかるだろう。
繰り返しになるが、このように商品先物は株式と比較してテイルが大きいのである。 結果として商品先物のトレーダーはこれが日常いつでも発生しうることを前提にしてポジションを建てている、つまりもともと臆病なスタンスで相場にのぞんでいるために、異常事態が発生しても、株式の投資家と比べて破綻することがまれなのである。 もちろんそういったことのトレードオフとして、短期間に大成功して「カリスマトレーダー」となることもないわけだが、淡々と売買して10年経ったらビックリするくらい儲かっていたというスタイルのほうが良いと考える人が商品トレーダーには多いのであろう。
ちなみに、私はこれらのヒストグラムや統計量の一覧を眺めているといつまで経っても飽きない。 トレードのアイデアの宝庫だからだ。 商品のリターンの分布は、銘柄によってはものすごくクセがある場合があって、そのアノマリーを使って容易にトレード戦略をこしらえることができる。
従って(???)、今回サンプルとしてあげた銘柄は全部無難なものばかり(>_<)。 このブログで仰天するような形状のヒストグラムなんかを示してあれこれ解説して能書きをたれたりすると、「余計なことを言うな!」とか「馬鹿にするな!」とかいったクレームが来るので困ってしまうからです(笑)。 なのでリサーチは皆さんご自分でどうぞ(^^;)。
山崎元氏がクオンツ運用の弱点について書いているコラムが面白い↓。 ここで述べられていることは、いわゆる「システムトレード」についても当てはまることが多いんじゃないかな。 システムトレーダー必読!(笑)
http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/investment/yamazaki/in05_report_yamazaki_20080905.html
とくに、ファクターエクスポージャーをZスコアで表現する過程で、分散の大きさの情報が失われていること、そして、分散の減少の継続性についての検証が必要だとする主張を見逃してはいけない。 個人投資家においても、この要素を研究すれば優れたフィルターを策定することができるからだ。
これについては、これまで仲間内で議論されることは頻繁にあっても、個人投資家向けの「トレード本」や投資雑誌に載っているような記事ではまず見つけることができない事項であった。 実はこれはシステムトレードにおいてだけではなく、いわゆるバリュー株投資においても考慮が欠かせない要素だと思うのだが、個人投資家向けの本や記事の著者、筆者は、あまりに重要な情報なのでそれをあえて書かなかったか、もしくは全然知らなかったのかのどちらかであろう(^^;)。
しかし今回山崎氏が躊躇なく書かれてしまわれたので、この情報もすぐに人口に膾炙するであろう。 こんなに大切なことがタダで読めるというのはネットというのはありがたいものだ。 くれぐれもクレームを楽天に送ったりしないように願います(笑)。
さて、リターンリバーサル戦略をやるにしても、単純な価格のみに基づくリターンリバーサルは落し穴が多いことは前回にも書いた。 これを避けるには、バリューファクターと合成する方法が有効だ。 具体的に言えば、PBRとか予想PER、EV/EBITDAなどのバリュー系のファクターのZスコアと価格変動のZスコアーを平均してやればよい。
ただし、PBRやPERのファクターは当然にして価格変動のファクターとコバリアンスを持つので、やたらとたくさんのファクターを合成すればよいと言うものでもない。 (変数が増えれば見かけ上の説明力は上がるが、それにはほとんど意味はない)。
まあ、この話は長くなるので別の機会に譲るとして、今回は価格変動のみのリターンリバーサルの話。 リターンリバーサルをやる以上、きちんとリバースして欲しい。 例えて言えば図1みたいになって欲しいわけだ。 (これが図2みたいだと困るわけ)
だが、現実には図1のようになるのは稀で、図2のようになることが多いし、下手をすると回帰直線の傾きが正になったりする。 これはユニバースを大きく取ると不可避的に発生する問題で、例えばTOPIXユニバースでリターンリバーサルファクターのみでロング側、ショート側の銘柄を抽出すると、例えば、ショート側には製薬、電力・ガス、食品と言ったセクターばかり、ロング側には半導体や情報通信関連の銘柄ばかりが入るなんてこともあるかもしれない。
この場合、リバースが実現するまでの時間がロング側とショート側でことなるので、実際にはマーケットニュートラルでもなんでもなく、単にリスクを2倍とった片張りに過ぎないわけだ。 さらに同様のことはサイズが異なれば当然同種の問題が発生する。 このようにセクターやサイズが異なれば、同じ「リターンリバーサル」でも振る舞いが違うから、どんぶり勘定でポートフォリオを組むとストレスがたまることになる。
では、どうしたらいいだろう? これにはトータルリターンではなくスペシフィックなリターンのみに着目するのが良いとされている。 このあたりのことは私なんぞが解説するよりも「ファンドマネージャーのためのクォンツ定量分析によるマーケットの最新事情」のほうがはるかに詳しいのでそちらを参照されたい。
簡単に言うと、セクターやサイズといったファクターのエクスポージャーをできる限り消して、安定的にリバースしやすいスペシフィックな要素だけに注目してリターンリバーサルを行なおうと言うお話だ。 これにもユニバースを限定してそのなかでリターンを見てやる方法もあれば、セクターやサイズの要素を考慮して正規化してエクスポージャーを計算してやる方法など、いろいろなアプローチがある。
詳しく書き出すといつまでも終わらないので、この話はこのあたりでおしまい。 需要があればいつかセミナーでも話すかもしれません(^^;)。
さて、単に価格のみに注目したリターンリバーサルは単独で使うと思わぬ落とし穴があるのだが、依然としてよく「効く」ファクターであることには間違いない。 現にバーラの日本株モデルのJPE1にはRPM(リラティブ・プライス・モメンタム)、JPE2にはサクセスのファクターが採用されていたし、これらのファクターリターンはマーケット全体の騰落にあまり相関性がなく安定的に下落していることがわかっている。
つまり、例えばRPMが低い銘柄を買い持ち、RPMが高い銘柄を売り持ちすれば、マーケット全体の騰落に関係がなく収益が狙えるわけだ。(理屈上では) 実際にはこれだけでは絵に描いた餅で(^^;)、アウトライヤーに対するルールを策定したり、ユニバースをうまく選んでくる必要があるが、それでも強力なファクターであることには変わりが無い。
ところで、ついでに書いておくとRPMは次のように計算される。
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RPM= w * (R1 - r1) / STD1 + (1-w) * (R2 - r2) / STD2
----------------------------------------------------------------
R1:前期のリターン
R2:前々期のリターン
r1:前期の時価総額ウエイトによるユニバース全体のリターン
r2:前々期の時価総額ウエイトによるユニバース全体のリターン
STD1:前期のリターンのばらつきの標準偏差
STD2:前々期のリターンのばらつきの標準偏差
w:前期のウエイト(前々期のウエイトは当然(1-w))
RPMがプラスなのは相対的に上昇していることを示し、マイナスなのは相対的に下落していることを示している。 またウエイトは0.62とか0.71とかテキトーな値が用いられる。 JPE1のデフォルト値はもう忘れた(笑)。
なんだか小難しいように見えるかもしれないが、式の構造は簡単だし、時価総額ウエイトによるリターンの計算はデータを揃えるのがちょっと面倒だけど、TOPIXやJASDAQをユニバースにするなら、インデックスのリターンをそのまま使えばいいので実は楽ちんである。
それよりも、これはそれほど知られていることではないが(とは言うもののこれまで毎回セミナーでしゃべってきたので秘密でもなんでもない)、例えば同じ1ヶ月毎のリバランスでもそれをいつおこなうのかによって、少しパフォーマンスが違うのである。 例えば一般的なバックテストでは月末ごとにリバランスすることを前提に検証が行なわれるが、それではこのファクターの効果を過小評価していることにもなりかねないのである。
つまり、これに限らず、月中の「いつ」売買すればよいのかに関しては最適解が存在するし、そのアノマリーはかなりロバスト(堅牢)なのだ。 株式投資において、特にテクニカルファクターによる売買やバリュー投資において決して自分が株式を売買するTDMを軽んじてはいけないのである。 その差は小さいかもしれないが、じわじわと効いてきて長期的には大きな違いになって現れる。 このあたりのことはセミナーでかなり詳しく話したし、また機会を改めることにする。
株式のロング・ショートの売買手法は今もって個人投資家になじみがなく、私が以前におこなったセミナーでも受講者が非常に少なく、何年かかってもDVDが1枚も売れなかった話を少し前に書いた。 それを機についでにそのDVDは廃盤にしてもらったので、その内容のさわりをここに少し書いてもよかろう。
株式のロング・ショート戦略と言ってもいろいろなアプローチがあるが、私がセミナーでお話したのはレラティブ・リターン・リバーサルに基づいたロング・ショート戦略である。 わかりやすく言うと、売られすぎた銘柄を買い、買われすぎた銘柄を売って、常にニュートラルに近い(近いだけで本当のニュートラルではない)ポジションを維持し、マーケットが上がろうが下がろうが、控えめな利益をできるだけ安定的にとろうという虫の良い売買手法である(笑)。
だが、何が「売られすぎ」で何が「買われすぎ」なのかを策定するのは実は簡単ではないのだ。 単に上がったものを売り、下がったものを買えばよいかというと全くそうではない。
一般に日本の株式マーケットにおいてはリバーサルが「効く」とされている。 それは時価総額の比較的大きい銘柄群においては特に顕著であり、「効く」のは事実だといっていいと思う。 だが、果たして何に対してリバースするのであろうか? 単に過去のある期間のリターンに対して逆張ればいいのだろうか?
さて、一般によく効くとされているファクターの代表的なものには、①リターン、②バリュー、③サイズがある。 だが、これらの効き具合はそれぞれ少しずつ違う。 リターンに対するリバーサルは比較的短い期間で効きやすく、バリューが評価されるのにはもう少し長い時間がかかる。 また、サイズの効き具合は時期によっても違うし、大雑把に効いているだけとも言える。
さらにことを複雑にしているのは、①リターンのファクターと②バリューのファクターとはかなりの大きさのコバリアンスを持つし、これらは③サイズのファクターとも若干のコバリアンスをもつ。 また、リターンリバーサルの観察期間にしても、ユニバースによって最適な解は驚くほど異なるのである。
これらの状況を前提にして、株式のロング・ショート戦略の実行可能な形は何かということをお話したのである。 だが、少し話しが地味すぎたようだ。 「年率○○%のリターン!」とか「わずか1年で○億円に!」とかいったタイトルを冠したものと比べて見向きもされなかったのは言うまでもない(爆)。
今回は大好評(大ウソ)の検証シリーズである。 ここで取り上げるのはリターンリバーサルである。
一般に、株式はリターンリバーサル効果が高いと言われている。 つまり、上がったものは下がり、下がったものは上がるというものだ。 さて、個別株のリターンリバーサル効果を調べるには、ユニバースを特定した上で、「ある期間における個別株のリターンと次の期間におけるそれぞれのリターン」を散布図にプロットして回帰を観察し、それを時系列で順番でおこなうのが一般的である。
この方法では日本株においては明らかにリターンリバーサル効果があることが確かめられている。 しかし、ここでは少し趣向を変えて、単独の銘柄について、自己のリターンに対するリターンリバーサルがあるか否かを調べてみよう。 検証対象は日経平均先物、期間は1988年9月から2007年9月までの20年間である。 例によって期間の長さとしては十分だろう。
まず、過去5日間のトレンドと、それに続く5日間トレンドの間に、どんな関係があるのか、散布図を見てみよう。 トレンドの定義は以前のエントリーでも書いたが、回帰直線の傾きを用いた。
図1(青色)をみていただきたい。
横軸に過去のトレンドをとり、縦軸に将来のトレンドをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみるとこの2変数の間には関連性はなさそうだ。 日経平均先物においては自己のリターンに対するリターンリバーサルは5日間では働いていないとわかる。次に期間を変えてみてみよう。
図2(緑色)をみていただきたい。
横軸に過去のトレンド(10日)をとり、縦軸に将来のトレンド(10日)をとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみるとこの2変数の間には若干の正相関がありそうだ。 決定係数は1.2%ある。 これで日経平均先物においては自己のリターンに対しては10日間の時間枠ではモメンタムが作用しているとわかるだろう。
では、ついでに更に期間を延長してみてみよう。
図3(茶色)をみていただきたい。
横軸に過去のトレンド(20日)をとり、縦軸に将来のトレンド(20日)をとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみるとこの2変数の間には正相関がありそうだが、傾きも決定係数も10日のときより小さくなっている。 従って、日経平均先物における自己のリターンに対するモメンタム効果は20日間になると、弱ることがわかった。
以上、リターンリバーサル(モメンタム)といっても、期間によって異なった様相を示すことがわかる。 この話、気が向いたら続く...(^^;)
今回は、大勢の方々に好評をいただいている(大嘘)、テク二力ル分析の検証シリーズの一環として、OBV(オンバランスボリューム)をみることにより、多くのトレーダーの持つ誤謬について考察してみよう。
OBVに関するテク二力ル分析の解説によると、OBVは通常はトレンドと一致して動き、その動きが乖離したときにはトレンド反転のシグナルなのだそうだ。
早速検証してみよう。 検証対象は日経平均先物、期間は1988年9月から2007年9月までの20年間である。 例によって期間の長さとしては十分だろう。
まず、20日間(1ヶ月)のOBVのトレンドと同じく20日間(1ヶ月)の価格のトレンドの間に、どんな関係があるのか、散布図を見てみよう。 トレンドの定義は以前のエントリーでも書いたが、回帰直線の傾きを用いた。
図1(緑色)をみていただきたい。
横軸にOBVのトレンドをとり、縦軸に価格のトレンドをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみると明らかにこの2変数の間に関連性があるといえる。 決定係数も44%あり、疑う余地はない。 「OBVと値動きのトレンドは一致して動く」ことは正しいことがわかる。 これはとても美しい解説だ。 話す方も楽だし、聴くほうも極自然に聞けて異議は全くでないであろう。 かなりのテク二力ル分析はこうして語られている。
さて次に、期間をずらした図2(青色)をみていただきたい。
ここでも横軸にOBVのトレンドをとり、縦軸に価格のトレンドをとって、散布図を描いた。 ただし図1と違うのは、説明変数であるOBVと目的変数である価格トレンドとは期をずらしてあることである。 つまり、ある時点までのOBVが、それ以降の価格のトレンドに対し、説明力があるか否かを見ようというのだ。
この図2でも1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これを見ると、図1とは全く異なり、両者の関係に関連性は見られない。 決定係数もほとんどゼロである。 あれほど過去を説明するにあたり美しく機能を果たした変数が、未来を予測するには何の役にも立たないことがわかるだろうか?
だが、ここで前回のエントリーの議論に戻るのだが、過半の投資家は「過去を美しく説明する」ことにのみ注目し、「未来を予測できない」ことには注意を払わない。 未来は大雑把にしかわからないという事実を受け入れることに対し、潜在的に拒否反応があるからだろう。 これが、テク二力ル分析をはじめとしたエセ科学がいまだに廃れない理由のひとつだと私は思っている。 なまじ過去をもっともらしく説明できるがために、その同じ指標が未来を全く説明できないことに目をつぶるわけだ。
ところで、ついでに「OBVと価格のトレンドが乖離したときにはトレンド反転のシグナル」となるかどうかも検証しておこう。 図3(紺色)をみていただきたい。
前処理として、①OBVのトレンドの価格のトレンドが乖離したときのみを対象として、価格トレンドのZスコアを算出した。 さらに②アウトライヤーによる影響を除くために、データを±3σにて内側に丸めてある。 こうしてできたZスコアを横軸にとり、縦軸に20日間(1ヶ月)の期待リターンをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。
これをみると明らかに「OBVと価格のトレンドが乖離したときにはトレンド反転のシグナル」だという主張は大嘘であるとわかる。 回帰直線の傾きは右肩上がりであり、これを見ればOBVと価格のトレンドが乖離したときでも、どちらかといえばトレンドは継続しやすいとわかるし、その場合でも決定係数もわずか0.58%である。 実際には説明力はないといったほうが良いであろう。
皆さんはこれでもまだ、「不確実な未来を大雑把にでも予測するモデルを構築すること」よりも、「過去を完璧に説明する指標等」の話のほうに興味がありますか?
ここまで書いてくると、反論が寄せられるだろう。 いわく、「出来高と値動きのトレンドは関係がある」のではなく、「出来高と値動きのトレンドに一致した動きがみられる時は、そのトレンドがしっかりしたものである証拠であり、エントリーのチャンスである」というものだ。 確かに、システムトレード本や テク二力ル分析本によっては、そういうことが書いてあるものもある。
なるほど、なるほど。 では早速それも調べてみよう。 出来高のトレンドの価格のトレンドが一致したときのみを対象とし、その後のリターンとの関係を見てみるのだ。
図3(紺色)をみていただきたい。
前処理として、①出来高のトレンドの価格のトレンドが一致したときのみを対象として、これらの幾何平均の自然対数を取った。 ②さらにそれのZスコアを算出した。 さらに③アウトライヤーによる影響を除くために、データを±3σにて内側に丸めてある。 この①の処理は、分布の形をできる限り滑らかにして分析するためである。 こうしてできたZスコアを横軸にとり、縦軸に20日間(1ヶ月)の期待リターンをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみると明らかにこの指標にマーケットの行く末に対する説明力は無いといえる。 決定係数もわずか0.17%である。 「出来高と値動きのトレンドに一致した動きがみられる時は、そのトレンドがしっかりしたものである証拠であり、エントリーのチャンスである」どころか、むしろ「出来高と値動きのトレンドに一致した動きがみられる時でも、そのトレンドがしっかりしたものである証拠ではなく、エントリーのチャンスでもない」といったほうがはるかに正しいことがわかる。
ここまで書けば十分だとも思うが、「いやいやこの指標はそんなに長い期間のマーケットの行方を予測するのではなくもっと短い期間の予測に用いるものだ」という反論に応えて、目的変数を5日間(1週間)の期待リターンに変えて、検証してみよう。
図4(茶色)をみていただきたい。
これをみると回帰直線の傾きはさらに水平に近づき、決定係数もほとんど0(ゼロ)である。 より短期の予測にすら使えないのなら、長期のものには使えるはずがないと思うんだが...(>_<)。
とりあえず、日経平均先物のトレードにおいては、システムトレード本や テク二力ル分析本に書いてある出来高の増減とトレンドとの関係は信用しない方が良いかもしれない(^^;)。
今回は、一部の方々に好評をいただいている(ウソ)、テク二力ル分析の検証シリーズの一環として、出来高の増減とトレンドの関係を見てみよう。
一部のシステムトレード本や テク二力ル分析本には、次のような趣旨の記述が見られることがある。
「マーケットは出来高によって動かされており、上昇トレンドでは出来高が上昇し、下降トレンドでは逆に出来高が細っていく」
...本当だろうか?
早速検証してみよう。 検証対象は日経平均先物、期間は1988年9月から2007年9月までの20年間である。 長さとしては十分だろう。
まず、20日間(1ヶ月)の価格のトレンドと同じく20日間(1ヶ月)の出来高のトレンドの間に、どんな関係があるのか、散布図を見てみよう。 トレンドの定義は以前のエントリーでも書いたが、回帰直線の傾きを用いた。
図1(青色)をみていただきたい。
横軸に価格のトレンドをとり、縦軸に出来高のトレンドをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 これをみると明らかにこの2変数の間に関連性は無いといえる。 決定係数もわずか0.08%である。 「出来高と値動きのトレンドは関係がある」どころか、むしろ「何の関係も無い」といったほうがはるかに正しいことがわかる。
次に、期間を5日間(1週間)に変えた図2(緑色)をみていただきたい。
ここでも横軸に価格のトレンドをとり、縦軸に出来高のトレンドをとって、散布図を描いた。 そこに1次式で回帰した回帰直線と、その数式、決定係数を載せてある。 期間を変えてみても両者の関係に変化は見られない。 決定係数もわずか0.09%である。
...続く(^^;)
システムトレーダーがトレードで損失を被るのは、個別のトレードにおいては日常茶飯事というか確率的に不可避のことである。 そして一定期間ずっと損失が続くケースでは、その原因はアルゴリズムを構築する際に最適化をやりすぎたとか、高頻度のプログラムにおいてスリッページを甘く見積もったとかいったことが主な原因である。
まあ、これらのミスは経験を積めば減ってくるが、最近私は初歩的なミスで損失を被ってしまった。 原因はプログラムのコードを書き間違えたことにある(^^;)。 何ヶ月か前に、それまでまあまあ順調だったファクターモデルによるあるシステムを改良しようとして、説明変数を少し増やした。 その際に、プログラムが少し大掛かりなものになるので、検証モジュールとデータ更新・シグナル算出モジュールとを分離して、別々に作ったのである。 このとき、後者の作成においてコードを書き間違えたのだ。
検証モジュールにはミスはなく、使用に足るモデルが作成できた。 この結果を用いてデータ更新・シグナル算出モジュールを作成したのだが、ここで間違いは起こったのだ。 もちろん、プログラムが動くか否かのテストは行なったが、詳細なチェックはしなかった。 この手のモデル作りには慣れているという慢心が自分にあったのだろう。
さて、この新しいプログラムを使い始めたはいいが、それまでの旧モデルのときの安定した損益の出方とは違って、毎日々々損をするのである(ToT)。 変だなとは思ったが、一時的なものかもしれないと思い、我慢して使っていた。 だが、全然状況は改善しない。 時々は儲かるのだが、損益曲線はあいかわらず左肩下がりだ。 ずっと時間が経ってから、いくらなんでも何かおかしいと思って仔細に調べた結果、プログラムコードの書き間違いで、採用する変数として本来参照するものではなく、別のものを参照していることがわかった(@_@)。
このときの私の驚きと、落胆と、そして安堵(笑)はなんと表現したらいいだろう。 検証によって正しい考察を得ながら、実行する際の詰めの甘さで、少なからぬ投資資金を失ったのだ。 情けない。 これがもし、最適なファクターと全く反対の変数を参照していたのなら、毎日損失が続くから、すぐに変だと気付いてチェックをしたはずだ。 だが、参照箇所は何の関係も無い変数であったから、いわばランダムにシグナルが出ていたせいで、時々儲かったから、かえって発見が遅れたのだ(>_<)。
しかしまあ、原因がわかってよかった。 損失は喫したが、取り返せる金額である。 データ更新・シグナル算出モジュールのバグを直したら期待通りのアウトプットが出るようになった。 しかし、いろんなことが起きるね。 次回からは私ももっと慎重になるだろう(笑)。
システムトレードにおける神話(?)のひとつに、リスク・リワードレシオ信仰というものがある。 リスクとリワードの比の測り方に関してはいろいろな手法があって、例えば、累積損益曲線における回帰直線の傾きを、標準誤差で除するというというのも優れた方法のひとつで、私もよく使う。
だが、やはり最も合理的なのは、期待リターン(手数料控除後)の確率密度分布において、0(ゼロ)から無限大(笑)まで積分した値を、-無限大から0(ゼロ)まで積分した値で除してやると言うのが、一番合理的な考え方だと思う。 これに関しては、まともな人なら誰でも同じ結論に至るはずなので議論の余地はない...ハズ(笑)。
だが、世の中は広いもので、どう考えても珍妙にしか見えない理論(?)を自信たっぷりに開陳する人もいるものだ。 私が時々目にするもので笑えるのは例えば次のようなものだ。
<良く見かける解説>----------------------------------------
○○とセットアップが満たされ、××というトリガーが引かれた。
従って△△を、\14,500の逆指値で買う。
ストップロスは、直近の安値の\14,400に置く。
目先の利益目標は前回の高値の\14,800である。
このトレードではリスクが\100、リワードが\300であるので、リスク・リワード・レシオは1:3である。
このように確率統計的な観点から、エッジのあるトレードを行なうことが重要なのである...
----------------------------------------
...(^^;) なわきゃねーだろ!
これなどはあまりにバカバカしい話で、一見科学的な(?)衣を被っているのだが、誰でもすぐにインチキとわかるからエセ科学とすら呼べない。というか、リスク・リワード比が1:3などという大きな比率になるトレードがそう簡単にあるわけないだろ。
だが、こんなまるでカルト教団の教義のようなワケがワカラン支離滅裂なことを書く御仁は、ネタを提供するためにわざと冗談を書いているのでなければ、悪質な確信犯か、もしくは単なるアホのどちらかだと思うが、驚くことに、この類のことをシステムトレード本や投資雑誌、ネット上に書いているのが、一人ではなく複数いるのである。
一般的に言って、\100上昇する確率と、\100下落する確率ですら等しくはない(対数正規分布の非対称性ゆえ)。 いわんや、\300上昇する確率と、\100下落する確率が同じであるはずがない。 なのに、上記の解説では、それらの確率が等しいという前提で話を進めている。 悪貨は良貨に駆逐されるとすれば、こんな子供じみた話が流布するはずがないと思うのだが、この手のシステムトレード本が売れているところを見ると、こういうものを有り難がって読む人が結構いるらしい。
もういいかげんに、この手の迷信は消え去ってもいいのではないか? 個人のHPや商材屋の宣伝サイトはともかく、少なくとも編集者の目を通る投資雑誌や書籍は、こういったインチキを載せない責任があると思うし、これだけ金融に関するリテラシーが高まっているのだから、個人投資家は「バカにするな!」と声を上げるべきではないか? このままでは、投資の世界は、原野商法とか海老の養殖やロコ・ロンドンの詐欺話(笑)とたいして変わらなくなってしまう(ToT)。
いわゆるテク二力ル分析についてあれこれ否定的なことを書いてきたが、テク二力ル指標については別の意見を持っている。 つまりトレードにおいて実用的であると思っている。 これは短期的なトレード、商品先物のトレードにおいては特に有用である。 さらには、いわゆるテク二力ル分析が全く役に立たない株式の個別銘柄のトレードにおいても、スクリーニング過程に用いると非常に役に立つ。 これに関しては以前のエントリーにも書いた。
さて、それではどんなテク二力ル指標が「最も役に立つ」のだろうか? この疑問に対する回答は既に出ている。 最も優れたテク二力ル指標はストキャスティックスである。 RSIでも移動平均乖離率でもない。 私は日本株においてしか検証結果を確認していないが、少なくとも日本株においては、この事実は日本株内でユニバースを変えても、期間を変えても変わらない。 ストキャスティックスが一貫して、他のテク二力ル指標に対し有意に優れている。 具体的な用い方はメルマがにでも書こうかな(^^;)
なお、バリュエーション関連の指標をも含んだ指標全体の優劣に関しては、下記に参考書籍を挙げておく。 これら2冊は株式の個別銘柄のトレード・投資を行う人は必ず読んでおくべき書籍だと思っている。
①.ウォール街で勝つ法則
②.ラリー・ウィリアムズの株式必勝法
以前にトレンドの強さを測る定義とExcelの関数をこちら↓のエントリーで紹介した。
http://kenzo.enjyuku-blog.com/archives/2008_03_post_207.html
では「トレンドのあるナシ」を判定するにはどうしたらよいだろうか? つまり、マーケットの状態を「もち合い」と「トレンド」に2分して認識するのである。
これは次のようにおこなう。 ある期間(n日間とする)において、トレンドがあるか否かの判断は、次の2者の比較すればよい。
①.(n日間の期間リターン)/SQRT(n)
②.(n日間の平均日次リターン)
もし、①>②ならばトレンドが発生しているとみなしてよいし、①<②ならばもち合いにあったとみなしてよい。
念のために書いておくと、この考え方の背景にあるのは、ボラティリティは期間のSQRTに比例するという事実である。 しばらく前に、どこぞの商材屋の御仁が「土屋は最近トレンドが発生することが多くなったなどといい加減なことを言っているが、どこにそんな証拠があるのか?」という趣旨の言いがかりをWeb上で書いているのを見たが、私がトレードの話をするときには、数学的な定義に基づき事実を調べてから話をしているのであるから、言いがかりをつけるときには、それなりに調べてからモノをいうとよろしかろう(笑)。
ともあれ、トレンドのあるなしは、このように厳密に定義できるので、マーケットの状況をプロファイリングするのに用いると効果があることが多い。 具体的には階層構造になっているトレードシステムのアルゴリズムにおいてはフィルターとして使うのだ。 もちろん、パーセプトロンを使ったニューラルネットワークモデルにおいては、これらはカテゴリー値(±1)で入力するのである。