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システムトレーダー、ツチヤのひとりごと > ツチヤのひとりごと > R32のもたらしたもの
2008年11月29日(土) 02:23 « 前の記事   次の記事 »

R32のもたらしたもの

私はこれまでにバイクも車も何台か乗り継いできた。 クルマに関しては最初がドイツ車だったせいで、日本車の経年劣化が激しいのにビックリしたり、イタリア車のときは新車納車時から部品が取れてたりして、(^^;)な気分を味わったりした。 だが、自分にとって一番印象深く、思い入れがあったのはR32(8thスカイライン)である。 今回はこれについて書く。

R32は7代目のスカイライン(R31)の失敗と901運動の結果から生まれた。 R31は図体が大きくて、首都高はともかく、とても峠で振り回せるような機動性はなかったし、少なくとも走り屋の間ではあまり人気もなかったように思う。 現に映画「首都高トライアル」においては、主人公が中古車屋でR31が並んでいるにも係らず「R30ありますか?」と店員に聞く場面がある(^^;)。 

また、901運動とは自動車メーカーとしてジリ貧のさなかにあった日産が、かつての栄光を取り戻すべく、90年代までに世界一の技術で車を作ることを旗印におこなった試みである。 R32はこうした事象を背景に生産され、自動車の世界に革命をもたらした。

R32の技術が傑出していたのは、その設計思想の斬新さにある。 それをフラッグシップモデルであったGTRを例に見てみよう。 さて、それまでの「良い車」とは比較的大きな車体に、余裕のある排気量のエンジンを積み、カムはSOHC、サスペンションはシンプルなストラットタワーバー、駆動方式はFR(エンジン前置き後輪を駆動)が定番であった。 そして総体としてのクルマを時の試練を経た枯れたメカニカル技術で制御していた。

だが、GTRはこれらの常識の全て逆を行ったのだ。 小さな車体に、2.6Lの比較的小さい排気量のツインカムエンジンを積み、それにターボチャージャーを搭載して高出力を絞りだした。 駆動方式は乗用車としては極めて珍しい四輪駆動。 サスペンションは複雑なマルチリンクで、アテーサETSと呼ばれる仕組みで4輪を操舵した。 しかも、驚くべきことにこれらを電子制御で行なったのだ。

このR32は驚きの声をもって迎えられた。 私はGTRがデビューした頃の自動車評論記事をよく覚えている。 どの評論家もあまりの異次元の走りと設計思想の斬新さに、その感動を何と表現してよいか苦労していた。 おそらくほとんどの人が、未知との遭遇に際し、適切に判断、評価することができなかったのであろう。

そして、このR32の真価はツーリングカーレースで最も過酷なレースとされるベルギーの「スパ・フランコルシャン24時間レース」において、1991年に発揮されることになる。 R32は右ハンドル車のみの生産だったために、アメリカやコンチネンタル・ヨーロッパでは発売されていなかった。 だから、東洋の島国から、聞いたこともない名前のクルマがスパ・フランコルシャン24時間レースにエントリーしてくると聞いて、ヨーロッパのプレスやレース関係者は馬鹿にした目で見ていたという。 

しかも、そのGTRなる車は、市販車どころかレーシングカーの常識に反し、堅牢なメカニカル制御ではなく電子制御でクルマをコントロールし、過給機でパワーを限界まで搾り出した高回転型のエンジンを搭載、4輪を駆動、4輪を操舵する小型車だという。 24時間を完走するどころか「2時間ともつまい」というのがヨーロッパでの一般的な下馬評であった。

私はこのときのスパ・フランコルシャン24時間レースをテレビ中継で見ていた。 私も当時R32に乗っていたからだ(笑)。 そして、日産関係者以外のすべての予想を裏切って、GTRが大観衆の前でベルギーのサーキットを快走し、グループAクラス、グループNクラス共にぶっちぎりで優勝するのを観た。 しかもグループNクラスにエントリーしたGTRは並みいるグループAクラスの他のマシンを抑えて、総合でも6位に入賞している。 圧倒的な勝利であった。

スパ・フランコルシャンでのR32の勝利はただ単に1台のクルマの成功物語なのではない。 これは自動車の技術における大きな変化の嚆矢となった出来事だったのだ。 それまでメカニカル制御一辺倒であったクルマの世界に、電子制御の素晴らしさを認知させ、それが過酷なレースの世界でも全く問題なく機能することを世界中の人に知らしめたのである。

いまでこそ、電子制御はあたりまえになったし、トラクションコントロールをはじめとした技術は多くのクルマに採用されている。 そしてこの分野は日本が得意とし、欧州や米国の自動車メーカー、自動車部品メーカーが苦手な分野でもある。 しかし、GTR以前においては、それは非常識な試みあるいはゲテモノとみなされていた。 だが、この、枯れたメカニカル技術から研究室やテストコースで構築できるエレクトリカル技術への変化は止めようがない。 この技術革新は安全で低コスト、快適なクルマを私達にもたらした。 

なお、この変化はクルマだけではなく、あらゆる乗り物にもあてはまる。 東大の航空工学科教授であった加藤寛一郎氏が航空機におけるフライ・バイ・ワイヤー(電子信号による操縦・飛行制御システム)の可能性について熱っぽく語っていたのはこの当時、1990年代初めのことである。 そして、いまではエアバス製をはじめとして、多くの航空機が世界の空をフライ・バイ・ワイヤーで飛んでいる。 

もちろん、R32-GTRがなくてもこの変化は起こっただろう。 だが、GTRの走りはその革新的な概念の登場を非常にわかりやすい形で私達に知らしめ、この分野では日本が圧倒的な技術的優位があることを、ヨーロッパの一般の人々の前に示して見せた。 R32は商業的には成功しなかったが、その後経営が傾いてルノーに買収されることになる日産が、持てる技術と知恵を結集して成し遂げた奇跡である。 私がR32-GTRを稀代の名車だとする理由である。
 
 
 
以前にも書いたが、私は若い頃にR32(私のはGTRじゃなくてFRだったけど(笑))で、週末の夜(ときには平日の夜も)はずっと峠の山道を走っていた。 あまり熱心に走るのでガソリン代で収入のカナリの部分は消えていたし、タイヤなんかは新品に換えても3ヶ月でツルツルになった(>_<)。 当時はローリング族なんて言葉もなかったし、「頭文字D」みたいに組織化されたグループもなかったけれど、まあやっていたことはあんな感じのことだ(^^;)。 R32は走り屋だった私にとってとても素晴らしいクルマだった。

たしか92年のことだったと思うが、大学の同期のH君と筑波サーキットに2輪のレースを観に行ったことがあった。 H君は駒場の教養学部の頃の私の同期だが、兄妹そろって東大に現役合格するほどの秀才なのにとても鷹揚な性格で、大学に8年間も通ったという素晴らしい男である。 だからその頃彼はまだ学生で私は社会人であった。 私のR32でレースを観に行った帰りに、時間があるから筑波スカイラインを走ってみることにした。 当時の私は筑波スカイラインは何百回も走りこんでいたし、書店で国土地理院発行の地図を買ってきて研究したりして、各コーナーのRや傾斜、どこに砂が浮いていてどこに雨用の溝の鉄板が走っているか...などを細かく把握していた。 H君を乗せたまま、普段の6割くらいのペースで2往復くらいした(昼間は一般車が来る可能性があるし、同乗者を乗せているから全開では走らない)。 このときH君はジェット・コースターのような横Gに耐えると共に、R32が速くしかもスムーズに走るのに驚愕していた。 

その後、H君は大学を卒業してトヨタに入社しエンジニアとなった。 彼は2代続けてのトヨタマンで、父上はマーク2やハイラックスの主査をされた立派なエンジニアの方である。 3年ほどして彼から来た年賀状には、トヨタのある高級車のサスペンションの設計担当になったこと、そして研究のために個人的に、その頃はもう中古でしか手に入らなくなっていたR32を購入して毎日乗っていることが書かれてあった。 H君によると「国産車の中でこのR32のサスペンションが今もって最高のサスペンションであるから」だそうだ。



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この記事に対してのコメント

R32GTS-tTypeMに以前乗っていました。
「自由自在に振り回せる+ブレーキ弱過ぎ。。。」
な印象が有ります。

どこから此方に辿り着いたか憶えていないのですが(汗)
ツチヤさんの独り言を楽しみにしています。
シストレ関係ナシで、何でもアリアリの
「ツッチーの独り言」で再開では如何でしょうか(^^)


どこで書けばいいのか、わかりません。
ここで質問させていただきます。
明日までの更新かもしれませんので...。

システムトレードのことです。
システムトレーダって、暇ですよね?
だって、システムですから。
システムがすばらしいものであれば、あるほど、暇ですよね。
で、たとえば、株のトレーダだと、ほかの分野に参入するのでしょうか?
そうすることで、暇を解消するのでしょうか?

それとも、トレードの実りをほかに転ずるのでしょうか?

ひとつのトレードシステムで成功したひとたちが、どういふうにその後の人生を送ったか?

そういうことを最後に書いていただけたらと思います。

参考文献とか、あれば、ぜひ、お教え願えればと思っております。

どこで書けばいいのか、わかりません。
ここで質問させていただきます。
明日までの更新かもしれませんので...。

システムトレードのことです。
システムトレーダって、暇ですよね?
だって、システムですから。
システムがすばらしいものであれば、あるほど、暇ですよね。
で、たとえば、株のトレーダだと、ほかの分野に参入するのでしょうか?
そうすることで、暇を解消するのでしょうか?

それとも、トレードの実りをほかに転ずるのでしょうか?

ひとつのトレードシステムで成功したひとたちが、どういふうにその後の人生を送ったか?

そういうことを最後に書いていただけたらと思います。

参考文献とか、あれば、ぜひ、お教え願えればと思っております。

投稿が失敗したのでしょうか?
なにかエラーがでたようで...。

システムトレード、
その後についての質問です。

システムがすばらしいのもであれば、
利益がでますよね。
システムであれば、原則、暇ですよね?

で、その成功を、たとえば株から為替に...、そんなふうにフィールドをずらしていくのでしょうか?

それとも、実りで、ほかのことをはじめるのでしょうか?

魂の段階をあげるとか、
文筆業とか、

BNF氏はビルを購入したようですが、
なんかさえないような気もします。

私は決して儲けてはいませんので、
こんな質問もおかしいとは思いますが、
しかし、システムの向こうの問題を
ツチヤ氏はどう考えているのか?
それを切に知りたいと思います。

>「自由自在に振り回せる+ブレーキ弱過ぎ。。。」

そうですね。
私はブレーキとショックをニスモ製に換装してました。
ホントはシートもレカロかなんかにしたかったのですが、予算はガソリンとタイヤ代に消えました。(ToT)


この調子でブログ続けてください(笑)
気ままにかいて、システムの質問に気が向いたときに返答するスタンスで今までどおりでいいと思います。
言いたいことためてると健康に良くありませんので・・・。

R32のTypeMを羨望の眼差しで眺めつつ、SW20のNAバージョン(MC後の2代目)を乗り回していた過去を持つ者としてはこういう話題をようやく読めて狂喜乱舞です(^^

加藤先生と言えば最適レギュレータと言う印象があるのですが、土屋先生はトレードへの応用を検討されたご経験はお持ちでしょうか・・・?

R32 ホントに名車ですよね。GT-Rは勿論として、穏やかなグレードも基本性能の高さからくる正確でスムーズかつ濃厚な走りが最高に良かったですね。今でも改めて中古車で欲しいくらいです。901活動によってデビューした当時の日産車(インフィニティーQ45、プリメーラなど)はさほど売れなくて残念でしたが全体的に走りのレベルが高く一瞬だけ自動車技術の世界最高に手が届いたようでしたね。また最近も日産車の技術と走りの質が復活気味ですので楽しみです。
以前のエンジュクのセミナーではお世話になりました。土屋先生はそのときも、私の質問に日産自動車を例に挙げてお答えくださいました。

私は土屋先生の車やバイクの話も大好きでしたので今回の休載は残念ですが、どうか先生もお元気でご活躍ください。


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