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システムトレーダー、ツチヤのひとりごと > ツチヤのひとりごと > 見張台に降る灰
2008年08月06日(水) 22:33 « 前の記事   次の記事 »

見張台に降る灰

今日は原爆の日、1945年に広島に原爆が投下された日だ。 太平洋戦争と米国による原子爆弾の投下に関しては、書きたいことがたくさんあるけれど、それはまた別の機会にして、本日は別の話。

よく知られているように、日本国民は核兵器によって3回の被爆を体験している。 広島と長崎と南太平洋である。 最後の被爆では大勢の漁船員の方が被爆したが、なかでも第五福竜丸の被爆が一番ひどかった。 結局、8人の方が亡くなっている。

ビキニ環礁の水爆実験の話は子供の頃から知っていたが、詳しく知るようになったのは学生の時からである。 当時の関係者で、長らく東大医学部で教えておられた吉澤教授から講義のときに話を聞いたのだ。 私が吉澤教授からその話を聞いた年に先生は退官されたので、私達は直接教えを受けた最後の学年となった。

第五福竜丸が南太平洋で被爆し、2週間ほどして焼津に帰還、乗組員は東大病院と国立第一病院に入院した。 当時、ビキニ環礁での水爆実験は米軍によって機密とされ、米国は日本の漁船団の被爆を認めようとしなかった。

しかし、入院中の漁船員の容態は悪くなる一方であった。 日本はなんとしても米国に被爆の事実を認めさせなければいけない。 だが、そのためには二つの証拠、すなわち漁船員の体内に水爆由来の人工的な放射性同位体が存在することを示すこと、そして、第五福竜丸が水爆による放射性降下物(死の灰)をかぶったことを示すことが必要であった。

このために、何人かの科学者がかり出された。 当時東大病院の青年医師であった吉澤先生もこの任にあたった。 放射性物質の存在を見つけるにはイオン交換樹脂があれば簡単にできる。 だが、今でこそ化学の実験室にいくらでも転がっているイオン交換樹脂は、当時日本には存在しなかった。 米国にしかなかったのである。

しかし、吉澤先生達はあきらめず、来る日も来る日も患者の尿から放射性物質を取り出す試みを続けたという。 そしてついに水爆由来の放射性同位体を抽出することに成功する。 これにより、米国は水爆実験の事実と、漁船団の被爆、そして危険水域の指定のミスを結局認めた。 

もうひとつの証拠、第五福竜丸の死の灰はどうだっただろう? こちらも発見は難航を極めた。 吉澤先生は任を帯びて単身焼津に赴いたが、南太平洋からの2週間の航海のうちに、必死の清掃作業による洗浄によって船体は洗われ、死の灰はどこを探してもなかったという。 ガイガーカウンターの針は勢いよく振れるものの、肝心の死の灰がどこにも見つからないのだ。

だが、関係者の懸命な捜索の結果、それは意外なところから見つかった。 被爆し、身体の弱った船員達が洗えなかった唯一の場所、マストの高いところに備え付けられた見張り台のわずか直径数十センチの板の上に、死の灰はしっかりと降り残っていた。 これが敗戦国日本が米国に第五福竜丸の被爆を認めさせる決定的な証拠となったのだ。
 
 
 
被爆から半年後、無線長の久保山氏が国立第一病院で亡くなった。 「被爆被害者は私が最後にしてほしい」という言葉が遺言となったという。
 
 
 
 



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この記事に対してのコメント

今も昔も大国は自分の責任をまずは回避する。昔アメリカ、今中国ですかね。
さらに言えば、アメリカの振り撒いた害毒はは昔原爆、今サブプライムローン。

ロシア、インドもひどいよ。

アメリカについては、正の面もあると思う。


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